文化の継承と保全~「守る」ことは「手放す」こと(2017年5月16日)

 

一例として、真言宗の法衣の縫製は特徴的な方法があるため、縫う人の直接伝授が必要なのだそうです。つまり職人芸ですね。ところが、地道に座って行う仕事に就こうとする若者はめっきり少なくなったとか。後継者に技術の伝授ができないことには、もちろん製品の製造は困難になってきます。基本の法衣には「白衣」「空衣」「如法衣」などがあり、修行を前に、小物も含めて一そろい揃えると、5万円くらいかかってしまい、割高感は否めないのですが、限定製造で手作りの品ということで、ちょっと仕立てのよいスーツを一着買うような感覚です。後継者不足となった伝統産業の業種は、高野山の産業だけでなく、日本全国、いや世界各地のあらゆるところで見られます。国や都道府県といった行政レベルでもそのような現状に対して対策をうってはいるようですが、なりわいとしての「継続」を考えると、現在の社会情勢の中、古い文化の保全については、厳しい面の方が浮き彫りにされます。ふと思うのですが、「守る」ということは「手放す」という語とおそらく同義です。人は慣れ親しんだものを手放すことが難しいから、大切なものを守ることができなくなるのです。何でもそうですが、それを本当に大切に思うならば、どのような分野でも、刷新的な継承の方法を今までになかったやり方で考え実行していく必要があります。そこに向き合おうとする人間は多くはないでしょう。それは、ときに痛みを伴うものであることもしばしばだからです。それはリーダーシップと呼ばれるものの本質です。